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社説 再挑戦が可能な社会に 

社説:最悪失業率
再挑戦が可能な社会に


 7月の完全失業率が1953年の統計開始以来、過去最悪の5・7%となった。過去のデータをみると、失業率は景気が回復しても1年数カ月は悪化を続ける傾向にある。秋から冬にかけて6%を超える可能性も強まっている。衆院選後の新しい政権は緊急課題として真っ先に取り組むべきだ。

 失業率は、この1年間に1・7ポイントも急速に悪化した。昨年秋の世界同時不況の影響で、企業の生産が大きく落ち込み、雇用を維持できなかったことが背景にある。弱い立場の派遣やパートなどの非正規雇用労働者の雇い止めが先行し、現在では正社員にまで雇用調整が及んでいる。

 景気は底を打ったという見方もあるが、厚生労働省は「雇用情勢はさらに厳しさを増している」と判断している。当面は雇用調整によって人件費を抑制し業績回復を図るという「雇用なき景気回復」となるだろう。だとすれば、雇用回復までの期間をいかに短縮し、失業率を改善させていくか、これが雇用・失業対策のポイントとなる。

 最大の雇用・失業対策は、産業を活性化させて生産水準を回復させることだ。同時に、雇用調整助成金を拡充して解雇を食い止め雇用を維持する必要があるが、これを長く続けることは財政上も難しい。

 中長期的には二つの選択肢が考えられる。一つは、現在、働く人の3人に1人にまで拡大した非正規労働者の増加に歯止めをかけ、正規雇用への切り替えを政策で誘導することだ。もう一つは、非正規雇用の存在を前提とした上で、処遇改善によって正規社員との格差を縮める方策だ。その場合、使い捨てにされやすい非正規労働者のセーフティーネットを拡充する政策が必要になる。

 現在の状況から判断すれば、両者の中間的な対応を取るのが現実的な選択だろう。非正規雇用を抑制するために規制を行う一方、失業リスクに備えるセーフティーネットを整備する、これを中長期の雇用・失業対策の柱に据えるべきだ。

 具体的には衆院選で野党が主張している製造業務への派遣を原則禁止とする労働者派遣法の見直しと、非正規労働者の処遇改善策としての「同一労働・同一賃金」原則の導入をセットで検討すべきだ。

 雇用が流動化すれば、労働市場からこぼれ落ちる人が出る。今、必要なことは「失業しても再挑戦できる社会」の仕組み作りだ。日本は、もはや高失業率の国になった。かつて失業率が低かった時代には関心が低かった職業訓練制度をしっかり定着させ、失業後に技能や知識を身につけて新しい仕事にチャレンジできる社会を目指したい。

毎日新聞 2009年8月29日 東京朝刊