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原発は人々に不安と負担をばらまくモンスターか 

社説 原発優遇策 民意の軽視も甚だしい

社説 原発優遇策 民意の軽視も甚だしい

(08/23) 北海道新聞

 あまりに露骨な原発優遇策と言わざるを得ない。

 経済産業省は総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会で、原発で発電した電気に一定の価格を保証する新制度案を示した。

 2016年に予定される電力小売りの全面自由化で、競争によって電気料金が下がった場合、電力会社は原発への巨額投資が回収できなくなるかもしれない。

 だから、原発を維持、新増設できるように利益が確実に出る価格を設定するというのである。

 政府は、必要なコストをすべて電気料金に上乗せする「総括原価方式」を将来廃止する方針だが、原発だけを例外扱いすることになる。さらに、原発建設の融資に債務保証も検討するという。

 これでは電力自由化の意義は失われる。国民的合意もないまま、かさ上げされた電気料金と税金で原発を支える仕組みを導入することは断じて許されない。

 政府と電力会社は「原発は安い電源」と主張して推進してきたが、福島第1原発事故後の検証で、コスト面の優位性は揺らいだ。

 重大事故の賠償や処理、安全対策の強化などにかかる費用が膨らみ、電力各社は、自由化が進展した場合、原発の運営に支障をきたすと訴えている。

 こうした声に応じて、経産省が価格保証を提案したことは、政府自ら、原発は安価ではなく公的支援抜きでは成り立たないことを認めたに等しい。

 英国に類似の制度があるが、これは原発の新増設を目的としている。政府が新増設への態度をあいまいにしたまま、その環境を整備するようなやり方は不誠実だ。

 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を引き合いに出す議論もおかしい。

 FITは再生可能エネルギーを主要電源に育てるため、新規事業者の参入を促す制度である。

 これを電力大手の巨大電源にあてはめるのは筋違いだ。

 政府は、民主党政権が国民的議論を経て掲げた「原発ゼロ目標」を覆し、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けるエネルギー基本計画を決定した。

 一方で、基本計画には「原発依存度を可能な限り低減する」と明記されている。その道筋を示さず、原発優遇策まで打ち出すのは、民意軽視も甚だしい。

 政府が国民に新たな負担を求めると言うのであれば、原発政策の是非について、正々堂々と国民的な議論にかけるべきだ。


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