スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

年功賃金は労使の長い闘いでの産物、政治家はこれ以上の口出しは慎め/マタニティハラスメントは人としての営みの根幹に唾吐くものだ 5件/発症の遅い石綿がん認定は国の態度にかかっている 

社説 年功賃金議論 政府・財界主導許すな
「妊娠も仕事も取るのは欲張り」と人事部長に言われた マタハラ被害者が語る実態
社説 【マタハラ判決】 社会にも大きな損失だ
社説 マタハラ判決 意識改革の起点としたい
社説 マタハラ判決 「違法」受け止め意識改革を
社説 [マタハラ判決] 企業は重く受け止めよ
石綿による 肺がん見過ごし多発か 北陸3県で少ない労災認定

2014年10月25日 中日新聞

社説 年功賃金議論 政府・財界主導許すな

 またも強引に労働制度の改悪を進めるのだろうか。安倍晋三首相が政労使会議で年功序列の賃金体系を見直すよう求めたのは不当な介入である。議論の進め方も、その中身もあまりに乱暴すぎる。

 安倍政権の考え方はこういうことのようだ。年齢や勤続年数に応じて昇給する年功型賃金では労働生産性が低くても中高年社員の給与は高い。年功型から成果型に変えれば成果に見合わない中高年層の賃金を下げられ、全体の生産性が向上し、企業業績は上がる-。首相は「若い子育て世代の賃金を手厚くすべきだ」と述べた。それは総額人件費を抑えたい経営側の期待に沿う議論の進め方だ。

 そもそも賃金制度は労使の議論の積み重ねで決められるもので、政府の口出しは筋違いだ。不当な介入もさることながら議論があまりにずさんではないか。

 年功型賃金は、新卒一括採用や長期安定雇用を原則とした日本型雇用制度のいわば柱である。働き手は終身雇用など安定的な生活保障と引き換えに会社への帰属意識を高め、転勤や長時間労働も受け入れてきた。勤続年数を重ね、経験の蓄積に応じて賃金が上がるのは、それなりに合理性があったのである。

 確かに中途採用者や出産休業から復帰する社員らにとって問題があるかもしれないが、それこそ企業ごとに対応を検討すればいいことだ。政労使会議では年功制の廃止を決めた日立製作所などの例が持ち出されたが、そんなグローバル企業ばかりではない。

 問題なのは「働き方」と不可分であるのに賃金体系だけを取り出し、いきなり「年功型は見直すべきだ」と求めるやり方である。正規と非正規の格差や雇用流動化の是非などを含めた広範な議論を労使でじっくり深めるべきなのだ。

 議論の場も考えるべきだ。そもそも政労使会議は、政府と労働組合、使用者(財界)の三者とはいっても、実態は「政府・財界連合」対「労」の構図である。政治献金を再開し「政策をカネで買う」との批判もある経団連と、企業寄りの政策で応える安倍政権は二人三脚で労働制度改革を推し進めている。

 春闘の賃上げをめぐり政府の介入を許したことで労働改革への口出しも予想されてはいたが、これ以上は許すべきではない。

 成長戦略を論じる経済財政諮問会議は、財界と政府に同調する学者ら都合いい人選だが、そこに労働界を加えて議論してはどうか。



2014年10月25日 19:53

「妊娠も仕事も取るのは欲張り」と人事部長に言われた――マタハラ被害者が語る実態

妊娠や出産をきっかけとして働く女性が職場で嫌がらせを受ける「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」について、最高裁判所が画期的な判決を出した。広島県の病院で働いていた理学療法士の女性が「妊娠後に降格させられたのは、男女雇用機会均等法に反する」として、病院側に損害賠償を求めた裁判で、最高裁は10月23日、「妊娠や出産を理由とした降格は、原則として違法」とする初めての判断を示したのだ。

この最高裁判決を受けて、被害者団体のマタニティハラスメント対策ネットワーク(マタハラNet)のメンバーと、女性の労働問題に取り組む弁護士が翌24日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を開いた。新村響子弁護士は「今まで、妊娠を理由とした降格や退職強要について、違法だとする判断はほとんどなかった。この判決を力にして、国や企業に広くマタハラの問題を訴えたい」と語気を強めた。

●休んでいたら上司が自宅に・・・

マタハラNetの小酒部さやか代表は、自身が契約社員として働いていた会社で受けたマタハラの被害を次のように語った。

「私は2回、流産しました。

1回目は、ある業務がすべて自分に集中していて、毎日夜11時過ぎまで働いて、双子を流産しました。

半年後に2回目の妊娠をしたときは、切迫流産と診断されたため仕事を休み、家で安静にしていました。

すると、自宅に上司が来て、『突然1週間も休んで迷惑をかけた』『復帰しても周りが気をつかうから、もう契約を更新するな』と、4時間にわたって言われました。

働き続けたかったので翌日から出社し、1週間後に流産しました」

●「職場に戻りたいのなら、妊娠は9割あきらめろ」

小酒部さんは、会社がおかしいのではないかと疑問を抱き、「これはいったいどういう状態なんだ」と人事部長に思いをぶつけた。しかし、人事部長は、小酒部さんに対してこう言い放ったという。

「妊娠も仕事も両方取るのは、欲張り。わがまま」

「そんなに職場に戻りたいなら、妊娠は9割あきらめろ」

子どもが欲しかった小酒部さんは「退職せざるを得なかった」と語った。

●「法律はうちの職場では通用しない」と言われた

会見に出席したマタハラNetメンバーの宮下浩子さんは、妊娠したからといって解雇された経験がある。12年前、まだ「マタハラ」という言葉が使われていないころの出来事だ。

「納得ができず職場復帰を求めましたが、『お腹の子が死んだら、店に良い噂が立たない』『妊婦がいると、お客さんが気をつかうから雇えない』と上司に言われました。

インターネットで調べて、妊娠を理由に解雇することは違法だと知ったので、再度上司に復職を求めにいきました。

すると、『法がどうのこうの言ったって、その職場に合わせてできた法律ではない。その法律は、うちの職場では通用しないから』と言われました」

宮下さんは、涙で言葉につまりながら当時の状況をこう振り返った。

●「労働基準局の職員にも傷つけられた」

宮下さんは、会社に相談しても解決しないと思い、妊娠7ヶ月の身体を引きずりながら労働基準局へ赴いた。しかし、職員に「会社に問い合わせたが、顧問弁護士が何ら違法なことはしていないと言っている。復職は認められない」と言われてしまったという。

「最後のツテだと思って相談に行ったのに、そこでもまた傷つけられ、辛い思いをしました」

そこで、宮下さんは夫にも相談し、会社を相手に裁判を起こした。

最終的に宮下さんは、「妊産婦の働き続ける意向を尊重し、その働きやすい職場環境の維持、改善につとめるものとする」という条件を会社に呑ませたうえで、”勝利的和解”をすることができたのだという。

「12年経って法が改正され、『マタハラ』という言葉も知られるようになりました。しかし現状は12年経っても変わっていません。そして、心に受けた傷も変わっていません。

私は無事に出産ができましたが、この12年の間に、亡くさなくてもいい命がたくさんあったはずです。これ以上、私たちのような被害者を出したくなくて、ここに来ました」

●マタハラの背景にある「長時間労働」へのこだわり

職場でのマタハラをなくすために、どんなことをすべきだろうか。

新村弁護士は「日本では、長時間働けて、サービス残業もたっぷりできないと、雇ってもらえない。妊娠や育児をしている女性はそんなに働けないので、そこから排除される代表になる。それがマタハラの原因です」と指摘した。

さらに、「長時間働けなくなることがあるのは女性だけでなく、介護している男性や、体調を崩した男性も同じです。いろいろな事情を抱えた人でも、家庭と仕事を両立しながら働ける時代が来てほしい。長時間労働を見直して、すべての労働者がワークライフバランスを自由に選択しながら働ける社会を目指したい。判決はその第一歩」と訴えた。

小酒部さんは「1つの仕事を1人に集中させないで、いつ誰が抜けても仕事が滞らないような働き方を目指していくべきです。たとえば、1つの仕事を2人組でやる『ペア制度』を導入するのはどうでしょうか」と提案していた。

(弁護士ドットコムニュース)



社説【マタハラ判決】社会にも大きな損失だ

2014年10月25日08時12分 高知新聞

 妊娠や出産を理由に、降格など不利な扱いをしてはならない――。前近代的ともいえる意識がはびこる職場に、最高裁が強い警告を発した。

 広島市の理学療法士が、勤務先の病院を訴えた裁判の上告審判決だ。最高裁は「妊娠による降格は原則として違法」とする初めての判断を示し、広島高裁に審理を差し戻した。

 男女雇用機会均等法は妊娠による降格や減給などを、明確に禁じている。

 女性は妊娠後、軽い業務への転換を病院に求めたところ、副主任のポストを外された。同時に管理職手当も失った。被った不利益は重大で、妥当な判断といえる。

 働く女性が妊娠、出産を理由に解雇や雇い止めをされたり、職場で精神的、肉体的嫌がらせを受けたりする「マタニティーハラスメント(マタハラ)」が社会問題化している。判決は事業主の意識改革を強く求めた。

 判決はまた、降格などの不利な処分をする際は、①影響や程度について事業主が説明し、労働者が同意する②円滑な業務や適正な人員配置の必要性など「特殊な事情」がある―のいずれかの理由がなければ違法だとした。これが基本的なルールとなろう。

 ただ「特殊な事情」についての具体例には言及がなく、個別の司法判断を積み上げる必要がある。厚生労働省の統計では2013年度、妊娠や出産による不利益に関する相談が2千件以上あったが、これも氷山の一角にすぎまい。出産を機に仕事をやめる女性も依然、たくさんいる。

 上司の何げない言葉に傷ついたり、露骨な悪口や配置転換が行われたりと、「マタハラ」にはさまざまな形がある。妊娠や出産が「周囲に迷惑を掛ける」といわれ、つらい思いをしている人、育児に追われ泣き寝入りしている人もいよう。

 少子化が一大問題となっている日本で、これは大きな社会的損失である。女性が子どもを産み、育てながら力を発揮できる環境があってこそ、みんなが働きやすい職場といえる。

 セクハラやパワハラと同じく、職場からなくしていくための取り組みが必要だ。職場研修などで理解を深めることから始めてもいい。

 出産という本来は祝福されるべきことで女性が悩み苦しみ、キャリアを途切れさせる。そんな矛盾を放置していいはずがない。



社説 マタハラ判決 意識改革の起点としたい

 女性が働きながら出産、育児をするのは当たり前‐。そんな社会の実現に向けて、この司法判断を意識改革の起点としたい。広島市の病院に勤める女性が妊娠後に降格されたことをめぐる訴訟の最高裁判決である。

 最高裁は、妊娠が理由の降格は原則禁止であることを確認したうえで、例外的に許される場合の基準を初めて示した。本人の自由意思による同意か、業務上のやむを得ない特別な事情などがなければならない‐というものだ。

 働く女性の権利を重視し、これまでは幅広く容認してきた雇用主の裁量権をかなり限定的に捉える判断だ。男女雇用機会均等法の趣旨を徹底するよう求めるメッセージとも読み取れる。

 働く女性が妊娠、出産を理由に解雇や雇い止めをされたり、職場で嫌がらせを受けたりすることを「マタニティーハラスメント(マタハラ)」と呼ぶ。こんな言葉が広まるのは実際に苦しむ女性が増えているからだ。女性は非正規雇用が多く、表立って声を上げにくいという人も少なくない。

 その根底にあるのは、子育てや家事は女性の仕事‐といった男女の役割分担を当然視する社会の固定観念だと言わざるを得ない。

 景気停滞に伴う要員減で仕事がきつくなり、短時間勤務や育児休暇の女性につらく当たっていないか。男性が育児休暇を申請しにくい雰囲気はないか‐。職場の足元から見直すべきだろう。

 勤務条件や職場のルールも再点検したい。残業の原則禁止や在宅勤務の導入など女性が働きやすい環境を整えることが業績改善につながった例もあるという。

 社会全体の意識改革には行政の後押しも欠かせない。均等法など法制度の周知徹底とともに、職場環境が劣悪な企業には厳しい指導を検討してほしい。経営体力の弱い中小企業には目配りも大切だ。

 安倍晋三政権は「女性の活躍」を看板の一つに掲げる。それは管理職などへの登用だけではないはずだ。職場で今苦しんでいる女性の声にこそ耳を傾けてほしい。

=2014/10/25付 西日本新聞朝刊=



社説 マタハラ判決/「違法」受け止め意識改革を

 妊娠や出産を機に解雇や雇い止めに遭う、職場で精神的、肉体的な嫌がらせを受ける、といった「マタニティーハラスメント(マタハラ)」を訴える女性が増えている。

 職場に迷惑が掛かることを心配したり、不利益な扱いを受けることを恐れたりして、待ち望んだ妊娠を上司にさえ報告できない実態もある。

 23日に示された司法判断が、そのような前時代的で健全さを欠く企業風土に風穴を開け、事業者の意識改革を促す契機になることを期待したい。

 妊娠後の降格が男女雇用機会均等法に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決。最高裁は「妊娠による降格は原則禁止で、女性が自由意思で同意しているか、業務上の必要性など特段の事情がない限り違法で無効」とする初の判断を下した。

 訴えていた女性は広島市の病院に勤務していた2008年に妊娠が分かり、業務の軽い部署への配置転換を申し出たところ、異動後に管理職を外された。

 最高裁は「降格は女性の意向に反するもの」と認定し、降格させる特段の事情についても「審理が尽くされていない」と指摘。「管理職の任免は使用者側の経営判断に委ねられている」として降格を適法とした二審判決を破棄し、審理を広島高裁に差し戻した。女性が逆転勝訴する可能性が高まった。

 一連の裁判で女性側は、「安易な降格は女性労働者を萎縮させ、キャリア形成を妨げる」と訴え続けた。女性が活躍できる社会が求められる中、最高裁が働く女性への配慮を強く事業者側に求めた意義は大きい。

 連合の調査によると、妊娠経験のある働く女性のうち、4人に1人が、妊娠や出産に伴い職場で解雇や嫌がらせを受けていた。厚生労働省への昨年度の相談件数も、セクハラが減少する一方、マタハラは2090件で前年比15%増になっている。

 マタハラが社会問題として注目され始めたのは近年で、泣き寝入りしている女性は少なくないだろう。

 日本で、働く女性のうち第1子の出産をきっかけに仕事を辞める女性が6割に上る。不本意な離職が多いのは、出産や育児と仕事とを両立できる環境が整っていない証しと言っていい。

 国は開会中の臨時国会に、「女性活躍推進法案」を提出した。女性の登用を後押しすることで経済成長に結び付ける狙いだが、まずは足元の現実を直視すべきだ。

 同法案が事業者に、妊娠や出産、育児に配慮した雇用環境の整備を求めたのはよしとして、実効性をどう担保するかは不透明だ。単なる努力義務で終わらせては、今回の最高裁判決に沿った対応とは言えまい。

 マタハラの背景にあるのは、時間外労働を前提にした企業社会だ。事業者には、柔軟な働き方や社員が協力し合う勤務体制の整備が求められる。高齢社会で介護の在り方も問われる今、女性に限らず全労働者にとって望ましい方向でもあるはずだ。

2014年10月25日土曜日 河北新報



社説[マタハラ判決]企業は重く受け止めよ

2014年10月25日 05:30 沖縄タイムス

 女性は広島市内の病院のリハビリ部門で理学療法士として働いていた。2004年に管理職の副主任となった。第2子を授かった08年、軽い業務への転換を求めたところ副主任を外された。

 男女雇用機会均等法9条は「婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止」を定めている。不利益な取り扱いをしてはいけない事由の一つが「軽易な業務への転換の請求」。働く女性の母性保護のための規定である。

 理学療法士の女性が、妊娠後に降格されたのは均等法に反すると病院側に賠償などを求めた訴訟で、最高裁は「妊娠による降格は原則禁止で、女性が自由意思で同意しているか、業務上の必要性など特殊事情がなければ違法で無効だ」とする初の判断を示した。

 妊娠や出産を理由にした職場での嫌がらせ「マタニティーハラスメント(マタハラ)」をめぐり、雇用主に厳格な対応を求める判決である。

 原告の女性は「これまで何度も憤り、傷つき、悔しい思いをしてきた。法律があっても守られないのなら意味がないと、打ちひしがれた日もあった」と心情を明かしている。

 法律で明確に禁じられているにもかかわらず、不利益な取り扱いが横行するのは、違反しても企業名公表という制裁の是正効果が限られているからだろう。

 均等法の施行から30年近くたつ。行政による指導をもっと強めるべきだ。

    ■    ■

 働く女性の割合が30代で落ち込む「M字カーブ」は日本特有の就業形態として知られる。女性の2人に1人が出産を機に退職している数字の裏にマタハラが隠れている。

 連合が働く女性を対象に実施した調査で、4人に1人がマタハラの被害に遭ったと答えていた。「心無い言葉を言われた」「解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導」のほか、「残業や重労働を強いられた」という声もあった。  会社と交渉する気力もなく黙って辞めたという人もいて、潜在的な被害者はもっと多いとみられる。

 マタハラの深刻化は、リストラなどで人が減り職場に余裕がなくなっていることと関係している。立場の弱い非正規労働者に、その矛先が向きがちだ。

 取り組むべきは仕事の分担や工夫、働き方の見直し、人員配置などである。いら立ちを妊娠・出産する女性へ向けるのは恥ずべき行為だ。

    ■    ■

 「管理職なら残業は当たり前」といった長時間労働や、「子どもの病気で会社を休むなんて」など子育てに不寛容な企業風土を変えていかなければ、マタハラにつながる構造的な問題はなくならない。

 子育ての負担が女性だけに偏り、キャリア形成に不利に働くようでは、子どもを産もうという気持ちもしぼむ。

 安倍晋三首相が訴える「女性が輝く社会」は、男性の働き方を変えなければ実現できないことを理解すべきだ。

 妊娠・出産の報告に「おめでとう」「手助けするよ」と声を掛けられる、当たり前の職場でありたい。



石綿による肺がん見過ごし多発か 北陸3県で少ない労災認定

(2014年10月25日午前7時00分) 福井新聞

 福井県内でアスベスト(石綿)による肺がんが、多く見過ごされている可能性があると「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の北陸支部が指摘している。北陸3県は肺がんの労災認定件数が、多くが石綿が原因とされる悪性中皮腫に比べ、非常に少ないためだ。県内の患者が病院で通常の肺がんと診断された後、家族の相談をきっかけに労災認定された事例もある。同支部では、電話相談などで疑い例の掘り起こしに力を入れている。

 患者と家族の会北陸支部は今年8月、福井県内の80代男性を今春の支部発足後、初の労災認定に導いた。石綿による肺がんだった。男性は3年前に発症して県内の病院に入院。肺の画像には、石綿を吸い込んだ跡が映っていたが、通常の肺がんと診断されていた。

 今年1月、家族から「スレート(屋根ふき材)工事をしていたことがある。労災ではないか」と会員に相談の電話があった。職歴などを調べたところ、男性は20~30代に地元の工事会社で働いてスレートを扱い、石綿を吸い込んだとみられることが分かった。男性は労災申請中の今年5月に亡くなった。補償の一部は時効で消滅していた。

 被害者支援に取り組む関西労働者安全センター(大阪市)事務局次長で、患者と家族の会本部事務局を担当する片岡明彦さん(55)は「私が見てもすぐに労災と分かる典型的な例。見落としに当たる」と指摘した。

 厚生労働省によると、福井県の石綿の健康被害に伴う労災認定は2010年度6人、11年度ゼロ、12年度2人、13年度6人(速報値)。福井労働局労災補償課の大野修一職業病認定調査官は「県内の労災認定件数は決して多くない。市町を通じ広報しているが、石綿は潜伏期間が数十年と長く、高齢者になって気づかずに亡くなるケースもあるのではないか」と話す。

 患者と家族の会によると、国際的に石綿による肺がんと中皮腫の比率はおおむね2対1とされ、肺がんの方がはるかに多いことが分かっている。しかし、日本の08~12年度の労災認定件数の比率は中皮腫1に対し肺がん0・83と逆転している。特に北陸は肺がんの労災認定件数が少なく、福井県は中皮腫1(11人)に対し肺がん0・36(4人)と3県で最も低い。片岡さんは「申請すればすぐ認定される事例で埋もれているケースがかなりある」とみている。

 中皮腫は原因が石綿に直結するが、肺がんは「たばこが原因」とされるケースもあるという。中皮腫で夫を亡くした北陸支部事務局の片山千代栄さん(66)=福井市=は「一般の人は医師に(通常の肺がんと)言われたら信じる。労災認定や救済を受けられるなんて思わない」と語る。

 同支部世話人の野村美雪さん(49)=富山県南砺市=は福井大医学部附属病院がアスベスト中皮腫外来を設け、積極的に対応しているとする一方、「北陸の病院を回ると健康被害に対する医師の意識は必ずしも高いとは言えない。患者が少ないこともあるが、被害の見立てという部分は遅れている」と感じている。


7件の記事を引用しました

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://seibanlocalunion.blog45.fc2.com/tb.php/8700-dd64f426

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。