労災で死ぬ、人の命は一度きりのもの、誰もが解っているはずだが 5件/待遇改善より派遣労働そのものを無くせ 3件/雇用促進は被災地にとって一番の支援だ/職業訓練基金が無駄になるのはひとえに行政の不味さが起因/おい!人の金を博打に使うとは何事だ/ 

社説 過労死防止法 働く人の命を守る社会に
英会話学校講師 過労自殺 自宅持ち帰り「残業」 異例の労災認定 石川
16時間超夜勤 5割超 看護職員調査 医労連
石綿被害 「マスク義務怠る」 国に賠償命令 福岡地裁
福島第1原発 鋼材落下 3人重軽傷 労災事故
非正規雇用の待遇改善へ 超党派国会議連発足
派遣法大改悪法案の審議強行に強く抗議する (談話) 全労連
労働者派遣法改正 反対アピール 連合兵庫
ルートインジャパン 登米コールセンター開設 ディオ社元従業員安堵
無駄・不正 1位は厚労省 2位農水省
安倍政権 公務員年金には手を付けず 公的年金を株に投入か

社説 過労死防止法 働く人の命を守る社会に

過労死防止法 働く人の命を守る社会に
 働き過ぎで、尊い命が奪われるような社会は変えなければならない。

 過労死や過労自殺を防ぐ対策を国の責務とする過労死等防止対策推進法が1日から施行された。今月は初の「過労死等防止啓発月間」(毎年11月)である。

 法制定は、大切な家族を失った遺族らの悲願だった。法整備を求める声の高まりを受け、党派を超えた国会議員連盟が昨年発足し、今年6月に議員立法で成立した。

 過労やストレスは脳や心臓の疾患を招くだけでなく、うつ病などの精神疾患から自殺に至る場合がある。厚生労働省が脳・心臓疾患による死亡で労災認定したのは2013年度で133人、過労自殺(未遂を含む)は63人だった。労災申請に至らないケースも多いとみられており、専門家は「数字は氷山の一角」と指摘している。

 防止法は「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡と自殺、またはこれらの障害」を「過労死等」と定義し、「国は防止対策を推進する責務がある」と初めて国の責務を明記した。

 過労死を社会全体の問題として受け止め、対策に取り組む姿勢を明確にした意義は大きいといえよう。ただ、防止法は理念を示すのが主な目的で、長時間労働の制限や罰則までは定めてはいない。

 国は今後、過労死の実態調査を進め、防止対策に関する大綱を定めることになっている。厚労省は協議会を設け、遺族や労使代表らから意見を聴いた上で作成する方針だ。実効性のある対策を盛り込まなければならない。

 過労死を招いてきたのは、長時間労働を前提とする日本の労働慣行だ。連合のシンクタンク、連合総研が実施したアンケートでは、9月に男性正社員の53%が残業したと回答し、「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業も少なくなかった。

 防止法には、政府の施策に協力する企業の責務も明記された。長時間労働を是正していくには、企業側の意識改革が急務といえる。

 今月4日には注目すべき判決が出た。飲食店チェーンの店長だった男性(当時24歳)が自殺したのは長時間労働とパワーハラスメントが原因として、両親が経営会社と上司らに損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は約5790万円の支払いを命じた。

 上司と社長の個人責任を認める一方、自殺した本人に過失はないとし、賠償額の過失相殺をしなかった。過剰な労働を強いる企業の姿勢に対し、司法が警鐘を鳴らしたといえよう。

 防止法にうたわれているように、過労死は社会全体にとっても大きな損失であることを共通認識にしたい。政府が掲げる女性の活躍推進も、長時間労働を前提とした働き方の見直しなしには進まないだろう。

(2014年11月07日 07時51分 更新)山陽新聞



2014.11.7 13:28更新 産経WEST

自宅持ち帰りでも「残業」 異例の労災認定

 金沢市で平成23年に英会話学校講師の女性=当時(22)=が自殺したのは、自宅で長時間労働する「持ち帰り残業」が原因だったとして、金沢労働基準監督署が労災認定していたことが分かった。

 労基署によると、持ち帰り残業は自宅での作業実態の把握が困難なため、認定されるのは珍しい。

 女性側の代理人弁護士によると、女性は大学を卒業した23年春、子ども向けの英会話学校を運営する企業に入社。3月に金沢校に配属され、6月初旬に金沢市内の自宅マンションから飛び降り自殺した。

 労基署は残っていたメールや関係者の話から、女性は業務命令で英単語を説明するイラストを描いた「単語カード」を2千枚以上自宅で作っており、持ち帰り残業があったとした。自宅での残業と、会社での残業を合わせると恒常的に月100時間程度の時間外労働があり、さらに上司から怒られる心理的負担も加わり、鬱病を発症していたとして労災を認定した。

 女性が勤めていた企業は「認定を受けたと聞いたが、内容を確認できていない。(女性の遺族に)お悔やみ申し上げ、業務を軽減する取り組みに努めたい」としている。



2014年11月7日(金) しんぶん赤旗

16時間超す夜勤 2交代病棟 5割超
勤務間隔も短く過酷な実態
看護職員調査 医労連


 日本医療労働組合連合会(日本医労連)は6日、看護職員の「2014年度夜勤実態調査」結果を発表しました。「2交代」病棟では5割超の職場で16時間以上の長時間夜勤となり、勤務間隔も短いという過酷な実態が明らかとなりました。

 調査結果によれば、8時間以上の長時間勤務となる「2交代」病棟の割合は、過去最高の30%でした。また、「2交代」のうち「16時間以上」の長時間夜勤を実施する病棟は5割超でした。

 もっとも短い勤務間隔(勤務から次の勤務の間隔)では、「8時間未満」が54%と最多でした。

法・指針に抵触

 さらに、看護師確保法・基本指針に抵触する夜勤日数「月9日以上(2交代に換算すると月4・5回以上)」の勤務実態が広くありました。「3交代」では、23・9%の看護職員が月9日以上の夜勤があると回答。「2交代」では31%が月4・5回以上と答え、ICU(集中治療室)では過半数が「4・5回以上」と深刻な実態が浮き彫りとなりました。

 国際労働機関(ILО)夜業条約・勧告では「夜業の労働時間は、昼間の労働より短くする」「勤務間隔11時間以上」、ILО看護職員条約・勧告では、労働時間は「1日8時間以内」「時間外含めて12時間以内」「勤務間隔12時間以上」などを定めています。

300万人体制提言

 日本医労連は9月、300万人の看護体制を求める提言を発表しています。東京都内で会見した三浦宜子書記長は「日本の現行法では、夜勤交代制労働の有害性やリスクに対応した規制がありません。患者や利用者の安全性を考えても規制が必要であり、大幅な増員を求めて運動を広げたい」とのべました。

 調査時期は14年6月の勤務実績で、452施設で働く看護職員11万2508人らから得た回答を集計したものです。



2014年11月07日 岩手日報

石綿被害で国に賠償命令、福岡  「マスク義務怠る」

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み肺がんや中皮腫になったとして、福岡、長崎、大分、熊本の各県の建設労働者とその遺族が、国と建材メーカー42社に計約11億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は7日、国に賠償を命じた。企業への請求は棄却した。

 高橋亮介裁判長は「国は1975年の時点で防じんマスク着用を義務付けるべきだったが、怠った」との判断を示した。

 同種の訴訟は各地で起こされ、判決は3例目。2012年の横浜地裁判決は請求を棄却したが、同年の東京地裁判決はこの日の福岡地裁と同様、国に賠償を命じた。



福島第1原発:鋼材落下、3人重軽傷 貯蔵タンク増設中

毎日新聞 2014年11月07日 20時26分(最終更新 11月07日 20時31分)

 7日午前11時20分ごろ、東京電力福島第1原発敷地内で、汚染浄化後の水を貯蔵するタンク(高さ約13メートル)の増設作業中、鋼材(長さ約25メートル、幅約10センチ、重さ約390キロ)が落下し、協力企業の男性作業員3人に当たった。関下義弘さん(57)=福島県いわき市平愛谷町=が脊髄(せきずい)損傷で重傷、40代の2人が両足首骨折などの重軽傷を負った。

 東電福島広報部によると、鋼材は半円状でタンク上部に仮留めされていた。溶接するため留め具を緩めた際に落下したという。県警双葉署が労働安全衛生法違反などの疑いもあるとみて原因を調べている。【土江洋範】



非正規雇用の待遇改善へ 超党派国会議連発足

2014年11月7日 10:49 財経新聞

記事提供元:エコノミックニュース

 非正規雇用労働者の待遇改善を目指す超党派の議員連盟が6日、発足した。自民、民主、維新、公明、みんな、共産、生活、社民などの国会議員参加。議連会長になった自民の尾辻秀久元厚生労働大臣は非正規雇用の問題解決に各党の知恵を結集し、改善を図っていこうと議連としての実効を上げる姿勢を示した。

 設立趣意書には「雇用全体に占める非正規雇用の割合が40%近くにまで拡大し、とりわけ非自発的な「不本意非正社員」の増加と生活苦に喘ぐワーキングプア層の拡大が社会的な問題になっている」と待遇改善の必要を強調。

 趣意書では「非正規雇用労働者の多くは低賃金かつ不安定な雇用環境の中で、社会保険や各種手当だけでなく、職業訓練や昇進・昇格の機会などからも排除され、その職責や頑張りに相応しい待遇や将来への安心を得ているとは言い難い」と現況認識を示している。

 こうした現況が「ワーキングプア層の増加、社会格差の拡大進行、可処分所得の低下と将来不安の増大と相まって、国内需要や税収の低迷、不況の長期化と地方経済の疲弊化、閉塞感の蔓延と社会活力の低下、少子化進展と社会保障制度の不安定化、日本社会の未来を担う貴重な人的資源の損失につながっている」と指摘。

 問題解決へ「国政を担う者の責任として、声を上げられない、声を上げる手段を持たない立場にある非正規雇用労働者に寄り添い、非正規雇用のあり方を抜本的に見直し、将来に希望のもてる生活が確保できる雇用を創り出していくことをめざす」としている。議連は賃金格差是正策など具体的提言をしていくものと期待されている。(編集担当:森高龍二)



派遣法大改悪法案の審議強行に強く抗議する(談話)

衆議院厚生労働委員会において与党は本日11月7日、野党の一致した強い反対を無視して、委員長職権で委員会を開催し、与党単独で、安倍首相出席の労働者派遣法大改悪法案の審議を強行した。議会制民主主義を踏みにじる暴挙であり、全労連は強く抗議する。

同法案については、委員会での実質審議入りを前にした10月31日、理事会に与党である公明党から「修正案」(別紙)が突如提出された。これは、与党自ら同法案が欠陥法案であることを示すものにほかならない。にもかかわらず、何ら具体的な説明もなく「修正案」は取り下げられ、11月5日の委員会も委員長職権で開催が強行された。今回はしかも、採決の前提となる首相出席の委員会の与党単独開催である。

11月 5日の審議では、塩崎厚生労働大臣の答弁に誤りがあり、その点での大臣の謝罪と審議が強く求められるなかでの強行開催であり、議会制民主主義のうえからもとうてい許されるものではない。野党が一致して強く抗議し、本日の委員会を退席したことこそ道理ある対応である。

与党・公明党がいったん提出した「修正案」は、「臨時的かつ一時的なものが原則であるとの派遣法の趣旨を考慮することを規定する」、「新法施行後の……労働市場の状況を踏まえて……新法の規定について速やかに検討を行う」としており、常用代替防止原則が事実上なくなることで派遣労働者への置き換えが急速にすすむことを危惧する内容になっている。我々は「生涯ハケン・正社員ゼロ法案だ」と厳しく批判してきたが、与党内でも同様の認識がひろがっていることを示すものにほかならない。

したがって、与党自ら欠陥法案であることを認めたに等しい同法案は、議会制民主主義の観点からもいったん取り下げる以外にあり得ない。与党は来週中にも衆院採決を強行する意向と伝えられるが、そのような暴挙は断じて許されない。

いま問われているのは、労働者派遣を一般的な働き方にして、低賃金の使い捨てが当たり前の社会にするのか、それとも、働く人々と家族の生活と人権をまもり、雇用の安定で内需を拡大し、日本経済の本物の「好循環」をつくりだすのかということである。マスコミでも、「不況を招く経済政策」などという批判が急速にひろがりつつある。

全労連は世論と共同をいっそう強め、同法案を廃案に追いこむためにあらゆる手立てを尽くし、とりくみをいっそう発展させる決意である。

2014年11月7日
全国労働組合総連合 事務局長 井上久



2014/11/7 20:33 神戸新聞

労働者派遣法改正に反対アピール 連合兵庫

 国会で審議中の労働者派遣法改正案をめぐり、連合兵庫は7日、神戸市内の街頭で「労働者の思いを無視した改正は認められない」と市民らに訴えた。同法案に反対する連合が9月に始めた「全国縦断アピールリレー」の一環で、兵庫では9日まで展開する。

 同法案の柱は、現行で「3年」とする企業の派遣労働者受け入れ期間の上限撤廃。5日に衆院厚生労働委員会で実質的な審議が始まったが、民主党などの野党は「不安定な働き方が広がる」として廃案を求めている。

 この日は「労働法制の改悪反対!」と書かれたプラカードなどが並ぶ中、連合本部の加藤良輔副会長が「働く者の命を守るため、撤回させなくてはならない」と強調。連合兵庫の辻芳治会長は「われわれを犠牲にする法改正だ」と声を上げた。

 同法案の廃案を目指し、ひょうごユニオンなどは署名を集めるなどして活動。兵庫労連は17日に神戸市内で集会を開く。(宮本万里子)



<登米コールセンター>ディオ社元従業員安堵

 ルートインジャパン(東京)が登米市へのコールセンター開設を正式に表明した6日、ディオジャパン子会社の東北創造ステーション(TSS)元従業員の間には、再就職のめどが立ったことで安堵(あんど)感が広がった。TSSが短期で閉鎖され、解雇後の失業保険給付の期限切れが近いことから、早期の事業開始や安定した長期雇用を求める声もあった。

 TSSを解雇され、求職中の女性(52)は「年齢による制約が多く、正社員の仕事を見つけるのは難しかった。経験を生かせる職場ができ、離職者を優先して雇ってもらえるのはありがたい」と話した。

 TSSは9月に閉鎖。76人が解雇された。主な業務を引き継ぎ、登米市にコールセンターを設けたもしもしホットライン(東京)も10月末で仙台市に事業所を集約した。

 もしもし社を10月末で退職し、失職中の女性(21)は「地元にコールセンターができ希望が持てる。今度は安心して働き続けたい」と期待する。

 もしもし社にはTSS元従業員19人が再就職した。今も同社で働き続けるのは5人。失職中の元従業員は約50人に上るとの見方がある。90日間の失業保険給付が間もなく終わる元従業員も多い。

 元従業員を代表し、市に対する陳情などを行ってきた女性(28)は「すぐ働きたいという元従業員は多い。ルートインには一日でも早く事業を始めるとともに、ずっと登米市で雇用を守り続けてほしい」と語った。

2014年11月07日金曜日 河北新報



無駄・不正1位は厚労省、2位農水省…国の事業

2014年11月07日 19時43分 読売新聞

 会計検査院は7日、2013年度の決算検査報告書を安倍首相に提出した。

 国の事業について無駄や不正などを指摘した件数は595件、合計金額は計2831億7398万円。指摘額が100億円以上の件数が前年度の12件から5件に減り、全体額も前年度と比べ2075億7112万円減少した。

 指摘金額が最も大きかったのは、厚生労働省が長期失業者に職業訓練を行うために設けた基金。約752億円が使われずに残っており、検査院は国庫へ返納させた。農林水産省が、東京電力福島第一原発事故で肉牛の出荷制限を受けた農家などの支援を目的に拠出した基金でも約731億円が余り、国庫に返納した。

 省庁別では、厚労省が約888億円で最多。農水省の約805億円、経済産業省の約360億円が続いた。



安倍政権が公務員年金には手を付けず、公的年金を株に投入か

2014年11月7日 10時15分

プレジデントオンライン

公務員の年金積立金は手をつけず「サラリーマンの積立金を株に投入」許せるか

■国民の年金資産を市場運用にさらす

安倍政権が公的年金の積立金約130兆円の半分をリスクの高い株式市場に投じようとしている。

運用を担当するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の現在の基本ポートフォリオ(資産構成)は国債60%、日本株12%、外国債11%、外国株12%。それを日本株25%、外国株25%にまで高め、国債を35%まで下げることを10月31日にGPIFが発表した。

しかも日本株の許容範囲は±9%、外国株±8%であり、最大で67%までの株式運用が可能となる。金額にして50%は65兆円、67%だと87兆円を株式に注ぎ込もうというのである。

だが、積立金の中身は老後に支給される基礎年金と2階部分の報酬比例年金であり、いうまでもなく会社と従業員が拠出する年金保険料が財源になっている。余裕資金どころか、損失が発生したら将来世代の年金カットにつながりかねない大事なお金であり、しかも株式比率は分散投資の域を超えている。

法律では「積立金の運用は、専ら被保険者のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行う」と定めている。だからこそ安全資産である国債比率を60%にしていたのである。

にもかかわらず、なぜリスクの高い運用比率の見直しを行ったのか。その狙いは、年金資産の拡大と同時に株式投資による日本経済の活性化という成長戦略の実現にある。

GPIFの運用見直しの発端は、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略。その中で公的資金の運用(分散投資の促進等)リスク管理体制等のガバナンス、株式への長期投資におけるリターン向上を目的に有識者会議で検討することが明記された。

これを受けて7月に甘利明経済再生担当大臣の下に「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が発足したが、メンバーのほとんどが積極運用派の学者や民間の金融専門家で占められ、年金の専門家は1人もいなかった。

報告書が11月に出されたが、運用見直しの理由として「被保険者の利益を優先する資金運用は、結果的に、日本経済に貢献することになり、また、各資金は、資金運用により経済成長の果実を享受する立場にもあることから、経済成長と資金運用との好循環が期待される」とバラ色のシナリオを描いている。

資産拡大と経済成長の二兎を追う作戦だが、果たしてそんなにうまくいくのか。

■「俺が倍に増やしてやるから、このカネを使わせろ」

そもそも年金資産は市場運用にさらす性質のお金ではないし、給付を確実に実施するのが大前提だ。それを経済成長に使うこと自体が法律を逸脱している。政府のやり方は、たまたま年金資産に目をつけて「俺が倍に増やしてやるから、このカネを使わせろ」というギャンブル的発想に近い。

年金の専門家の中には有識者会議の報告書に批判的な意見も出ている。

たとえば、報告書には米国、カナダ、ノルウェー、オランダ、スウェーデンの5カ国の年金の運用の基本ポートフォリオの事例を挙げて日本の公的年金がいかに国債の運用に偏りすぎているかを示している。

しかし、日本総合研究所調査部の西沢和彦上席主任研究員は比較対象の年金が決定的に間違っていると批判する。

「米国のカリフォルニア州職員退職制度(カルパース)とオランダ公務員総合型年金は公的年金の上乗せ部分の企業年金。カナダとスウェーデンは公的年金制度の2階部分の積立金、日本で言えば報酬比例部分だ。カナダ、スウェーデンの1階部分は税方式による最低保障の年金であり、運用もされていなければ、2階部分の運用結果の影響を受けることもない。ノルウェーの政府年金基金グローバルは年金という名前はついているが、同国の年金制度とは直接関係なく、しかも原資は石油事業収入であり、年金保険料ではない。これに対して日本の場合は運用成績しだいでは基礎年金も影響を受ける。年金制度の本質を見ないで比較することは決定的に間違っている」

日本の公的年金制度は、1階部分が全国民共通に支給する基礎年金(国民年金)、2階がサラリーマンに支給する厚生年金、そして3階が企業独自に支給する企業年金の3層立てになっている。つまり、諸外国では日本の基礎年金に相当する最低保障年金は運用リスクにさらされていないというのだ。

アメリカには全国民を対象とした日本の厚生年金と国民年金に相当する最低保障年金の積立金がある。しかし、この全額が非市場性の国債で運用されている。じつはクリントン政権時にこの積立金の一部を株式に投資すべきという案が政権内から出たことがある。

「その時に当時のグリーンスパンFRB議長は『積立金の一部を株式に投資することは間違いなく資本市場と経済の効率性をリスクにさらすことになる。どんなに手を尽くしたとしても、積立金を政治的圧力から遮断できるかは疑問である。陰に陽に圧力がかかり、積立金の生産的な利用とは異なる資産構成になってしまう』と批判している。有識者会議はなぜアメリカが国債でやっているかを何も学んでいない」(西沢氏)

グリーンスパン氏は年金が毀損するだけではなく、政治家に利用されることで健全な資本市場にも悪影響を与えると指摘しているのだ。金融先進国アメリカですらも国民共通の年金は堅く守られているのに対し、日本の場合は運用成績しだいでは基礎年金も影響を受けることになる。

■なぜ公務員の年金は一切手を付けないのか

もう一つの最大の問題点は運用成績が悪く、年金資産が失われた場合の対策について有識者会議はもちろん、政府首脳の誰もが言及していないことだ。現状では、仮に損失が発生すれば即座に償却しないで後で取り戻すという仕組みであり、いわば将来世代に先送りされることになる。

この点について経団連の幹部もこう言っている。

「そもそもGPIFが何のために運用しているかといえば将来世代の年金保険料の負担を少しでも軽くするためだ。当然、毀損した場合の対応は議論するべきだ。ただし、年金保険料の引き上げだけで対処するのは避けてほしい。今の受給世代と現役世代の負担と受益の関係を考えると、受給世代と現役の負担世代の双方が応分の負担をすべきだろう」

つまり、受給者の年金額の給付カットと現役世代の保険料の値上げで損失を穴埋めするべきだという。じつは公的年金の2階部分を運用しているカナダとスウェーデンには、損失が発生した場合は受給者の年金額カットと現役世代の保険料値上げで穴埋めするというルールがある。そうしないと将来世代の年金額に影響を与えるからだ。

当然、日本でも1階の基礎年金までも運用のリスクにさらそうというのであれば、そうした仕組みが必要になるはずだ。

ところが、そんなルール作りをしないままに多額の年金資産を株式に投じようとしている。そもそも最大の得票層である高齢者の年金額をカットする提案を政治家がするとは思えない。そうなると、現役世代の保険料値上げという不公平な仕組みしかない。すでに今の現役サラリーマンは高齢者に比べて年金の受益と負担の関係がアンバランスになっており、これ以上の格差の拡大が許されるのか。

ところで、年金積立金を実際に運用するのはGPIFの担当者ではない。

運用委託先の投資顧問会社のファンドマネジャーであり、GPIFは運用成績をチェックするだけの間接運用である。巨額の資金の運用について元外資系ファンドマネジャーはこう言う。

「日本株と外国株比率が50%を超えるとポートフォリオ的に見ても怖い。経済成長率が1%もないのに2~3%の運用利回りを出すのは大変難しい。現役のファンドマネジャーであれば10人中8人はできないと言うだろう。国債は元本の確実性が高いが、株は倒産すればゼロになる。(株で運用する)25%は年金資産の33兆円に相当するが、リーマンショックのように6割も下がれば、日本株だけで20兆円近くの資産が吹っ飛ぶことになる」

もちろん、好不況によって株価は変動し、数十年単位の長期の運用であれば損失は取り戻せるかもしれない。

じつは、今回の国債比率を引き下げて株式投資を増やした理由の一つとして、今は日銀の国債買い入れで超低金利にあるが、アベノミクスで脱デフレが達成されると金利上昇(国債価格の下落)を招く恐れがあり、それを回避するためだと言われている。

もしそうなら、安倍政権の成長戦略の第一の矢(金融戦略)が招いたひずみであり、それを回避するために年金資産の国債比率を下げるというのは、あまりにご都合主義的な考えではないか。

もう一つ。来年10月にはサラリーマンの厚生年金と公務員の共済年金が一元化される予定だ。しかし、共済年金の積立金は独自に運用されることになっている。制度は同じなるが、運用は別なのだ。現在の共済年金の資産構成割合は国債70%以上、日本株は8%にすぎない。

運用を担当する厚労省・GPIFの職員は公務員だ。つまり自分たち公務員の年金積立金には手をつけずに、サラリーマンの積立金を不安定なマネーゲームに費やそうしていることになる。

安倍首相は今年1月の世界経済フォーラム年次会議の演説で「日本の資産運用も、大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIFについては、そのポートフォリオの見直しを始め、フォーワード・ルッキングな改革を行います。成長への投資に、貢献することとなるでしょう」(首相官邸HP)と述べている。

大切な年金資金を株式市場に流すことを各国の代表者はどう受け取ったのだろうか。よく国民がOKしたものだと驚いた首脳もいたのではないか。

(溝上憲文=文)


11件の記事を引用しました

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://seibanlocalunion.blog45.fc2.com/tb.php/8738-4984493f