労働者を虫ケラのようにあつかう働かせる側の視点で作られた悪法 

社説 労働者派遣法改正案 働く側の視点で考えよう

社説 労働者派遣法改正案/働く側の視点で考えよう

 疑問や反対意見の多い法案も、衆院を通過してしまうと関心が薄れがちだが、ただすべきはただす姿勢を堅持するのは当然だ。野党の反対を押し切って6月、衆院で可決した労働者派遣法改正案のことだ。遅れ気味ながら、参院でも実質審議が始まった。

 派遣労働は不安定な雇用や低賃金などの問題を抱えている。改正案は雇用の安定と保護を図るため、全ての労働者派遣事業を許可制とし、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進し、派遣先ごとに派遣期間の制限を設ける、とうたう。

 狙いとは裏腹に働く側の視点は乏しい。秘書や通訳、システム開発など専門26業務とその他の業務の区別が廃止され、その内容を問わず同じ職場で働けるのは原則3年まで。企業は3年ごとに人を入れ替えれば、その職場で派遣労働者を何年でも使えるようになる。改悪にも映る。

 これまで働き続けられた専門職の人たちは「3年ごとに仕事がなくなる」と危機感を強めている。その他の業務の人も、派遣から抜け出せなくなる不安を感じている。

 派遣会社と無期雇用の契約を結べば、同じ職場で期間の制限なく働けるが、派遣労働者の8割が有期雇用という現状に合っていない。無期雇用の場合でも、派遣会社と派遣先との契約が取り消されれば、それまでだ。
 正社員への道を閉ざすことになりかねない一方で、企業側はその業務をずっと派遣で済ますことが可能になる。

 同一職場で3年を迎えた派遣社員について、派遣会社は派遣先企業に直接雇用を依頼することが義務付けられる。ただ、直接雇用は正社員とは限らず、アルバイトや契約社員の形態かもしれない。

 派遣を使う企業側には利点が多く、経済界は「義務付けは人材派遣会社が対象。受け入れ先の企業は派遣を自由に使え、大して責任を負わなくてもいい」と歓迎する。

 もともと派遣労働は例外的な雇用形態だった。雇い主と働く会社が異なるため、身分が不安定で賃金も低い。アメリカから人材派遣ビジネスが導入され、電算処理などを外部に委託する企業が増えたことから、1985年に労働者派遣法が制定された。

 当初は専門的な業務に限られたが、順次、拡大され、2004年には製造業への派遣が解禁された。景気の急速な悪化により突然、契約が打ち切られる派遣切りが横行。過酷な派遣労働が大きな社会問題にもなった。

 改正案は安倍晋三首相が成長戦略の要に位置付ける労働法制の一環。「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」取り組みの内実は企業優先の色合いが濃い。年収の高い専門職の残業代をゼロとする労働基準法改正案は、今国会での成立を見送る方向だ。

 派遣社員は、各種手当てや退職金、ボーナス、福利厚生などで派遣先の正社員との間に大きな格差がある。改正案はこうした格差是正に効果があるようにも思えない。批判に真摯(しんし)に耳を傾け、働く者の意をくむ制度に整えるべきだ。意欲あふれる労働者こそ企業の財産なのだから。

2015年08月10日月曜日 河北新報


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